青氷のブログ
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【狐と眼球のSS】嵯峨が別の立場だったなら ※空想してるお話

 って、僕は何を考えているんだろうな。いや、これは何かが僕に見せた直感なのかもしれない。晴明様とかが。よし、最後に……やっぱり考えてしまうのは、嵯峨さんのことだ。しかし嵯峨さんの、奇跡なんて想像もしたくない。僕以外の誰かなんて止めて欲しい。せめて――……職業が変わるとか、なら、いいのかな。

 嵯峨さんが刑事さんじゃなかったら……そうだなぁ、天草先生と逆だったら、どうなんだろう?

 普段だったら、

「嵯峨君、診察日から一ヶ月も過ぎてるよ。これ、処方箋出して薬局まで行って貰ってきたから」

 あきれたように天草先生が嵯峨さんを見つけ出す。

「悪いな祐助」

 煙草の煙を吐いてから、嵯峨さんがお礼を言う。

「何か悩み事とかない?」

 大体はリスナーのお店だ。だから先生が隣に座る。

「別にない」

 断言して、嵯峨さんはビールを飲む。五分診療希望者だし。

「……ちゃんと眠ってる?」

 目の下の隈を見て心配そうな天草先生が溜息をつく。
 と言うような流れをしてる気がする。もしもこれが逆だったら?


「嵯峨くん、今週のお薬は?」

 天草先生は毎週もらいに来るだろう。

「面倒だからまとめて一ヶ月分持って行け。処方箋はこれだ」

 嵯峨さんは五分診療だろう。

「実は悩みがあって」

 天草先生は、眠れなかったら訴えると思う。

「寝ろ」

 きっと嵯峨さんは先読みして言うだろう。悩みが例え不眠以外でも、寝ろ、って言いそうだけど。

 うん。なんだか、嵯峨さんが嵯峨さんじゃない。こんなお医者さん嫌だ。じゃあリスナーと嵯峨さんが逆だったらどうなるんだろう。

 ええと、普段だったら、

「”ネコ缶”いらっしゃい。はい」

 と言って自然と生ビールが置かれる。

「ああ」

 嵯峨さんが煙草を銜える。

「今日のお昼は、カロリーメイトだけだったんでしょう? おつまみいる?」

 何故なのか(も、何も情報屋だから)知っているリスナー。

「いい」

 イラナイの、いい、だ。嵯峨さんは、お酒を飲む時は基本的に食べない。

「そうそう今日の昼間の事件、犯人は”遮断機”の人だったみたいだけど」
「まだ調査中だ」
「後はレイラでしょ?」
「そっちは被疑者死亡」
「あーあ。殺されちゃったんだ、なんだかなぁ」

 というような流れだ。時折僕にも意味が分からない話題になることが多い。情報を渡し渡されしているようだ。本当に必要な時は、大金がかかるみたいだけど。これが逆だったら……?

「また来たのか……」

 多分怠そうに言うんだろうな。

「いつもの頂戴」

 楽しそうなんだろうな、リスナーは。卵も投げつけられないだろうし。

「どれだ」

 絶対リスナーは特定の酒ばかり飲んだりはしないと思う。

「赤いの」
「トマトジュースでも買ってこい。そんなことより、つまみだ。やる」
「有難う。丁度おなか減ってたんだよね」
「遮断機とレイラの件はどうせ無理なんだから、捜査の必要はないだろうな」
「ちょっ、何で知ってるかなぁ。けどね……これも仕事だからさぁ」
「だったら飲みに来てる場合じゃないな。帰れ」
「えー」

 と言うような感じになりそうだ。こちらは案外行けるかもしれない。
 ただ、普通すぎてつまらないな。もっとこう、インパクトのある……そうだ。嵯峨さんが、弘とポジション逆だったら? 上司じゃなく、部下。

 多分普段は、

「おい、弘」
「なんだ」
「右から七番目の棚の資料、電話番しながら読んでおいてくれ。午後にそこに行く」
「分かった」
「それと昼食は食べるな」
「なぜだ?」
「無理に食べさせられる場所に行くことになるから、空腹に越したことはない。食べさせられすぎて吐くなよ」

 と言うような会話をしていそうだ。これが逆だったら――……

「おい、嵯峨」
「読んでおきました」
「……それと、昼食は……」
「当然とりません。胃薬も飲んでおきました。まだ時間に余裕があるので、聞き込みに行ってから行きます。現場に直行するので。では」
「おい、単独行動は――」
「うるさいな」

 多分小声で言うだろう。

 ……――うん。案外あり得るな。そしてやっぱり天職は刑事さんなんだろうな。
 嵯峨さんの新人時代とか見てみたいな。

 多分それを見られる方が、晴明様が誰かと恋人になることよりも、祀理が弘を選ぶことよりも、一宮さんと弘が実は恋人だったなんて聞くよりも、灯くんと霙くんがそういう仲になることよりも、僕にとっては幸せだろうな。

「さっきから何を笑っているんだ?」

 シャワーから出てきた嵯峨さんに言われて、思わず息をのんだ。
 飲んでいた野菜ジュースが変なところに入りそうになる。むせた。

「え、どこから見てたんですか?」
「いや、一分前くらいからだ……なんだ? どうしたんだ? なにかあるのか?」
「無いです」
「そうか」

 嵯峨さんが冷蔵庫からビールを取り出して、プルタブを開けた。やっぱり僕の妄想よりも、本物の方が良い。今夜は仕事が速く終わったみたいだから、ゆっくりと過ごせる。

 それから一緒のベッドで眠る。
 それは妄想ではなかった。



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【狐と眼球のIF番外】灯と霙が恋人になったら(パラレルネタ。高校生勘違いコメディ)

「灯、別れてくれ」

 霙に言われた。――別れる……? 別れるって何のことだろう。永遠のお別れかな? 僕に殺して欲しいって事なのかな。僕に、霙が殺せるのか。ちょっとよく分からない。とりあえず理由を聞いてみよう。

「どうして?」

 返ってきた反応に霙は安堵した。雨に、「絶対、『うん』とか言われるよ」とキレ気味に馬鹿にされたからだ。――そもそも恋人にこんな冗談を言うのは最低だとは思うけどな、俺だって自信が欲しいんだよ。良かった。どうしてって事は、別れたくないって事だよな?

「冗談だ」

 灯はほっとした。――別に死にたい訳じゃなかったんだ。良かった。霙が死んじゃったら悲しいから。霙が死ぬのを見るくらいなら、代わりに僕が死んだ方がましだ。だから、その時は、

「僕から言うよ」

 ――? ……――!? 霙は目を見開きそうになった。
 ――い、言うって何を? ま、まさか、灯から別れの言葉を言われるのか? 今更無理だし、絶対受け入れられねぇよ。俺は灯の事が好きなんだからな!

「駄目だ」

 灯は思わず微笑した。――僕が死ぬのを悲しいって思ってくれているのかな? 霙はやっぱり優しいな。

「有難う」

 霙は煙草にしか見えない代物を銜えて火をつけた。――有難うと言うことは、だ。どういうことだ……? 待て、話が見えなくなってきた。そもそも相手は灯だ。俺の言いたいこと、きちんと伝わっているのか?

「――灯、俺達はどういう関係だ?」
「?」

 関係という言葉に、灯は小首を傾げた。血のつながらない従兄弟。
 黒贄羊。天気予報。同級生。何だろう。友達……? で、いてくれているんだよね?

「友達」

 友達……友達!? 霙は言葉を飲み込んだ。おかしい。――おかしいだろ。一昨日告白した時、俺が「好きだ」って言ったら、灯も「僕も好きだよ」って言っていたぞ。再確認を込めて、「俺のことが好きなんだよな? 鷹野霙のことが」って聞いたら、「うん」って言っていただろうが。「その好きは、恋だろ? 愛だよな?」とまで聞いて、「うん」って答えただろうが! それから俺は言ったよな? 確実に言ったぞ。「付き合おう」って。勿論場所じゃないことを伝えるために、「これからはずっと一緒にいよう」とも言った。

  恋人だからな。俺は束縛しない方だが、相手が灯なら別だ。何処に行くか分からないからな……。それはともかく、なのだから!

「俺はそうとは思ってないぞ」

 友達じゃなかったのかと灯は悲しい気持ちになった。――一昨日は好きって言ってくれて、ずっと一緒にいてくれるって言ったのに、嘘だったのかな? 僕の気持ちはやっぱりバレちゃってたみたいで、霙は、そんな僕の気持ちにも付き合ってくれるって言ってたのに。やっぱり雨じゃないと駄目なのかな? だけど、僕も、もう我慢できないよ。嘘でも良いから、好きっていって欲しいんだ。

「霙、好きって言って」
「好きだ」

 ……? 反射的に言ったものの霙は困惑した。――どういう流れだ。
 文脈が読めない。結局灯は俺との関係をなんだと思ってるんだ?

 好きだと言えと要求してきたんだから、当然恋人だと理解しているんだろうな? いや、相手は灯だ。念を押すべきだ。じゃないと雨に何を吹き込まれるか分からない。灯も俺も。

「灯、俺とお前は恋人だよな?」

 恋人……恋人!? 灯は自分の耳を疑った。思わず右手で右耳に触れてみる。聴覚は正常だと思った。――……恋人? 僕と霙が? 

 それは、霙も僕に恋していて、愛していると言うことなのか。嬉しくて笑っちゃうな。けど本当に?

「まさか」

 ――まさか、まさかだと!? 霙は、微笑してさえいる灯を見て息をのんだ。――おい待てなんだこのフラれる流れ。どうすれば良いんだ? 考えろ、俺……よし。恋人だと思いこませよう。灯は素直だし。

「まさか、恋人じゃないなんて思ってないよな? 灯は俺の恋人だ」
「そうなの?」
「そうなんだよ」

 灯は断言されて大混乱した。
 ――恋人? 幻聴じゃなく、恋人? 僕は霙の恋人だったの!? 
 いつから?

 一方の霙は、黙り込んだ灯を見て、目を細めた。

 ――この沈黙は、どういう意味合いの沈黙なんだよ? でも、もういい。俺は後悔しないように、断られない限りは、灯のことを想って行動しよう。灯の事がどうしようもなく大切なのだから。

「ソフトクリーム食べに行くか?」
「うん」
「その後は、水族館にでも行くか?」
「うん」
「それから、俺のマンションに来るか?」
「うん」
「今キスしても良いか?」
「うん――……っ?」

 灯が答えた瞬間には、霙は屈んで灯の唇を奪っていた。ふってきた感触に、何度も灯は瞬きをする。よく現状が分からない。ただ、霙の体温が冷たくて好きだった。

「お前、温かいな。子供みてぇ」
「霙が冷たいんだよ」
「その言い方だと俺が酷い奴みたいだろうが」
「霙は酷くないよ」
「じゃあ俺の何処が好きだ?」
「霙」
「ん?」
「霙が霙のところが好きだ」
「わかんねぇよ」

 それから再びキスをしてから、二人はソフトクリームを食べに行った。結局付き合おうがいまいが何かと勘違いし、やっていることはさして変わらない二人なのかもしれない。





【狐と眼球のIF番外】祀理が弘を選んだら ※本編のIFCPです。

「おはようございます、弘さん」

 寝起きのままウィンドブレーカー姿で、祀理がリビングに顔を出すと、弘が優しく微笑んだ。後は背広を着ればいつでも、出勤できる風だ。もうコートはいらない季節、新緑の芽吹く暖かい季節だ。

「おはよう」

 テーブルの上には、弘が作った朝食が並んでいる。

 結局二人は、共に東京で暮らしている。京都に戻る気にはならなかったのだ。二人だけの世界を構築するのに、単純に都合が良かっただけなのだが。弘は日中警察署へ行き、祀理は依頼された呪符書きの仕事などをする。家事は全て弘がしてくれる。時にそれを祀理は悪いなと思いもするのだが、変なところで世情に疎い弘に市民プールの存在を教えるなどしていると、それはそれで釣り合いが取れている気もしてくる。

「今日も美味しそうですね」
「毎日そう言ってくれるから、作り甲斐があるな」

 弘が誰のことをいっているのか想像がついて、祀理は微笑した。

 確実に以前一緒に暮らしていたという、一宮と風眞と舞理の事だろう。そして弘が料理を習ったのが、ナナキにだという事も知っている。弘も七木だが、親友の方のナナキはやっぱり”ナナキ”なのだ。

「俺、弘さんの作るスクランブルエッグが一番好きです」
「――正直嬉しいけどな。出来れば料理ではなく、俺のことを好きになって欲しい」
「もう好きですけど」
「足りない」

 冗談めかして笑った弘は、両手の指を組み、肘をテーブルについた。

 その上に顎を乗せている。昔は弘はこういう姿勢をしなかったが、上司の嵯峨がしているのを見て真似てみたら、思いの外気に入ったらしい。

「じゃあ今夜早く帰ってきて下さい」
「約束は出来ない。仕事だからな」

 誇らしそうに仕事と弘は言って笑うが、祀理は気がついている。気がつきながらも笑みを返した。≪異形≫を狩るための”狐提灯”の仕事があるのだ。悪くすれば、永遠に帰っては来られない。だからいつだって祀理は言うのだ。早く帰ってきて欲しいという願いを。

 ――そして弘は、愛の言葉を求めるのだろう。

「今夜の夕食も楽しみにしてますから」
「ああ。何が食べたい?」
「明日はおかゆ専門店に行くから、がっつり系かな」
「おかゆ専門店……? そんなものがあるのか?」
「あるんです。柊様を連れて行くんです。何で本当、みんな知らないんだろう」

 祀理が溜息をつくと、虚を突かれたような顔をしてから、吹き出すように弘が笑った。

 新しく珈琲を注ぎながら、祀理にそれを差し出す。

 素直に受け取った祀理は、思わず自分の言葉に恥ずかしくなったから、静かにカップを傾けた。――何せこれまで住む世界が違ったのだから当然だ。寧ろ、突然同じ立場になった自分が未だに解せない。

「柊様は、元気に?」
「はい。電話を貰った時は、元気そうでしたけど……うーん。悪いって言う話も聞かないですね」
「九重と出てくるのか?」
「いえ、桜様とみたいです」
「そうか……俺も明日、行けたら行っても良いか?」

 それを聞いた瞬間、僅かに弘の笑顔がこわばった。
 思わず祀理が首を傾げる。

「え? ええ。五瀬さんも一緒ですけど」
「五瀬がいるなら、まぁ……」
「まぁ、なんですか? え、来られるんなら来て下さい!」

 深々と思案混じりに吐息している弘を見て、祀理が声を上げた。いまいち意図する事がくみ取れず、首を傾げるしかできなかったからだ。まだまだ安倍九尾の事は、当人達しか知らないことばかりで、祀理は時に寂しくなる。未だに自分がその一員だとは思えないのだ。

「ああ。行けるように努力する。何があっても祀理くんを守りたいからな」

 しかしさらりと言われて、胸がじわりと温かさで滲んだから、祀理はどうでもよくなった。

 だから笑顔を返す。それから出かける時には、キスをした。そんな朝だった。



【狐と眼球のIF番外】一宮と弘が恋人だったら ※えぐい要素ゼロです。

 八坂の舞理が大学生になり、風眞は別途転職して、マンションには七木家の弘と、一宮宗信だけになった。無論どちらも仕事をしている。一宮は、本家が経営している会社の取締役として毎朝家を出るし、弘とて警察官の仕事をしている。

 とっくに二人で住む理由はなくなっていたが、「「引っ越すのが面倒だ」」で押し通し、現在でも二人は共に暮らしている。実際に、それはそれで真実だった。毎朝毎朝弘は、一宮の口に合う和食を甲斐甲斐しく用意し、Yシャツにはアイロンをかけ、洗濯もお風呂掃除もゴミ出しも全部している。一方の一宮は……特に何をするわけでもない。

「どうしてゴミを出しておいてくれなかったんだ……!」

 帰宅した弘が、朝頼んだゴミ袋がそのままになっているのを発見して声を上げた。

 大抵夕方頃には、大した用事がなければ帰宅している一宮は、ソファに寝そべって英字の新聞に目を通している。

「明日出せばいいだろう」
「明日は缶の日じゃない!」
「細かいことを言うな。一々と。なんならゴミ業者でも呼ぶか?」
「だったら実家に帰れ!」
「このマンションは一宮の持ち物だ」

 その言葉に、弘は目を伏せ唇を噛んだ。自分が実家に帰るとは、仕事の都合で言えない。仕事を辞めたくない。警察官でいたい。だが、出て行くとして、だ。一体どこへ行けば良いというのだ。

 もっとも、行く当てはいくらでもある。

 邪魔をすることにはなるが、弟と嵯峨の家、また安倍本家の持つ東京別邸、その他幾人かの九尾の当主の別邸もあるし、七木家の資産で新しくマンションを借りることも易い。だがそのどれもが、『自分が稼いだお金』や『自分の場所』では無いため、何も言えなくなるのだ。何よりも、一宮と離ればなれになるわけだ。

 現在の二人は、腐っても恋人なのに。

 そもそも自分が出て行くと言ったらどうするのだろうかと、弘は時折イラッとする。一宮一人では何も出来ないだろうし、やるとしたら、恐らく使用人を雇うのだろう。そうか……別に俺が出て行っても良いんだなと、弘は俯いたまま考えた。辛かった。

「……そうだな」
「――? 弘?」

 弘の声のトーンが変わったから、一宮が新聞から顔を上げた。

 何事だろうかと視線を向ければ、無表情の仲に、どこか悲愴な色を浮かべ俯いている弘の姿を捉える。――何故こんなに悲しそうな顔をしているのだ?

「……弘」
「……出て行く」
「おい?」

 その言葉に珍しく一宮は狼狽えて、慌てて立ち上がった。しかし俯いたまま、弘がエントランスの方へと歩いていく。追いついて、一宮がその手を握った。

「待て。どういう意味だ?」
「ここは宗信のマンションだからな。出て行く」
「それは、そうだ。だが、理由は?」

 怒ったように響く一宮の声に、『俺がいなくても良いんだろう』などとは言えなくて、弘はただきつく歯を噛んだ。

「言え」
「別に」
「言え」
「関係ないだろう」
「俺達は恋人なんだろう?」
「ッ、だ、だったら――……ここは、」
「なんだ?」
「俺とお前の家だろう。一宮の所有物でもな。少なくとも俺はそう考える。ただな、俺と宗信では考えが違ったみたいだからな。出て行く」
「? 俺とお前の家で、俺の持ち物だろうが。何を当然のことを言って怒っているんだ?」
「当然、か」

 訳が分からないといった顔であきれている一宮を、弘は睨め付ける。

 そして決めた。高級ホテルは無理だが、ネットカフェという最近嵯峨に教えて貰った場所で一夜を明かそうと。

「俺は好きな相手は自分の手元に置いておきたいんだ。だからお前が俺のマンションに住むのは当然だろう」

 しかし続いた言葉に、弘は顔を上げた。

「出てなど行かせない。そもそも、出て何処に行くつもりだ? 何処に行こうとも一宮がそこを買い上げるだけだぞ」

 当然だというような顔をしている一宮を見て、弘はなんだかおかしくなって、吹き出すように微笑してしまった。

「何でもお金で解決しようとするな」
「一宮にはそれだけの資産があるからな」
「それは宗信が稼いだお金じゃないだろう」
「――一宮は俺だ。俺は俺であり、一宮だ。一宮の資産は全て俺の資産であり、俺は一宮のモノでもある。何が言いたいのか全くもって理解できないな」
「俺だって七木のモノはそうだと思って生きてきた」
「それは間違いだから、思い直して正解だな」
「どういう意味だ?」
「弘は俺のモノだろう。七木家のものではないし、こればかりは、一宮の家に下げ渡せる代物ではなく、俺自身のモノだからな。金では買えん」

 そういうと一宮が、後ろからそのまま弘を抱きしめて、顎を肩に乗せた。

「明日にはゴミを出しておくから」
「――ッ、だから明日は缶の日じゃないと言っているだろう!!」

 まぁ大体そんな感じが日常の、異常な二人であった。これが現状だったら奇跡である。





【SS】クリスマス・その後(~王道学園の教師になった! 井原×狭山)


 ――最初は、天皇誕生日に出かけようという話だった。

け れど完全に学校が冬休みを迎えたほうがいいと、こんな時だけ理詰めに反論されて、ため息をつきながら俺はケーキを焼いたものである。井原先生はワインを調達してきてくれた。ほかには、チーズとキャビア、生ハムなんかを適当に買ってきてくれて、今日は準備はいいから一緒に飲もうと言われた。俺には、ちょっと、なんて気分で買ってくるには高級すぎるツマミだったから、やはり井原先生には財力もあるのだと、こういう時に思わせられる。

 さて、そんなクリスマスが終わり、忘年会も終わって――27日。
 要するに今日こそは、街へ出かけようと、俺は説得している。
 これまで井原先生は何かと理由をつけては断ってきた(!)。

「井原先生、そろそろ出かけますよ?」
「さ、狭山先生……今日大雪みたいですし、やっぱり、そ、そうだ初詣にしませんか?」
「井原先生……そんなに俺と一緒に出かけるのが嫌なんですか?」
「まさか!」

 俺が俯いて、コートのポケットに手を入れていると、慌てたように井原先生がソファから立ち上がった。まだ白衣姿だ。とても行く気が感じられない。

 思わずため息を押し殺した時、正面から腕を伸ばされた。

 抱きしめられる――と、思ったのはわずかな時間で、すぐにその腕は下ろされる。井原先生は、本当に照れ屋だ。男同士でこんな事を言うのも、今更あれだが、俺は井原先生にならば抱きしめられてもいい。だが、基本的に許可制だ。

 ……まぁ、この距離が、徐々に近づいていくのも、楽しみの一つなのかもしれない。







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